乳幼児がかかることが多い「とびひ」。このとびひは、感染力が強いというのを知っていましたか?ただの虫刺されと思い放っておくと大変なことになります。今回は、そんなとびひの種類や原因、治療方法や予防法についてみていくことにしましょう。
とびひについて詳しく知ろう
とびひとは?
とびひは、正式名称を伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)といい、主に乳幼児がかかることが多い皮膚症状を伴う病気とされています。細菌が皮膚に感染することで発症し、強いかゆみが現れるため搔きむしってしまい、その手で他の部位を触ると健康な皮膚へも感染してしまいます。あっという間に全身へと広がってしまうので火事の飛び火に例え、「とびひ」と呼ばれています。
とびひの種類
とびひには、水泡ができる水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)とかさぶたができる痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)の2種類があります。とびひが重症化して起こるSSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)という合併症もあります。
水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)の原因と症状
水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)は、夏に流行し、特に0~6歳頃の幼児が発症しやすいといわれています。とびひと呼ばれるものの多くは水疱性膿痂疹のことを指し、原因は黄色ブドウ球菌です。
黄色ブドウ球菌とは、私たちの皮膚や鼻に元々存在している身近な菌です。あせもや虫さされ、擦り傷などを掻きむしり、肌のバリア機能が低下すると、そこへ黄色ブドウ球菌が入り込んで、増殖し毒素を出します。これがとびひの原因となります。
そこに透明の水疱が作られ、段々と皮膚の一部に膿をもった水ぶくれ、膿疱(のうほう)となり皮がめくれていくのですが、これには強いかゆみを伴います。
子どもは、このかゆみにたえられず搔きむしってしまい、水泡や膿疱が破れて中の液体が周囲に❛飛び火❜し、症状がどんどん広がっていきます。
特に鼻の入り口には様々な細菌がいます。小さい子どもは鼻の周辺を触る機会も多く、鼻の周辺からとびひが始まるケースもあります。
痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)の原因と症状
痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)は、溶連菌が原因で発症しますが、黄色ブドウ球菌と併せて感染することもあります。赤く腫れた所に厚いかさぶたや、小さい膿疱ができるのが特徴です。水疱性膿痂疹に比べると感染者は少ないのですが年齢、季節は関係なく大人もかかります。特に、アトピー性皮膚炎の方は発症しやすい傾向があり高熱を出し重症になるケースもありますので注意しましょう。
痂皮性膿痂疹の症状は、炎症が強く、のどの痛み、リンパ節の腫れ、発熱などの全身症状がみられます。重症になると全身が赤くなる場合もあり、稀に腎障害を発症することもあります。腎障害を発症すると、治癒してからも数週間、尿中のタンパクを確認するため治療も長引きます。
SSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)
SSSSとは、正式名称「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」といいます。子どもによくみられる症状で、黄色ブドウ球菌が作る毒素によって、皮膚の表面が荒れ、火傷のようにズルズルと皮が剥がれる状態になります。以前は危険な病気でしたが、治療に効果的な抗生物質ができ早期に治療を開始すれば重症になることも少なくなっています。
とびひと湿疹など皮膚炎との違い
子どもが小さければ小さいほど皮膚トラブルは起こりやすいものです。同じような症状に湿疹があります。とびひと湿疹はどう違うのでしょうか。
湿疹
アレルギーや刺激などで皮膚の炎症によって起こる
とびひ
細菌の感染によって起こる
湿疹が気になり搔きむしってしまい細菌に感染してとびひになるケースもあります。アトピー性皮膚炎の子は他の子と比べてとびひになりやすいといわれています。注意しましょう。
とびひの検査方法
とびひは問診や視診で診断します。
水疱性膿痂疹の場合には、他の水疱ができる病気と区別しづらいこともあるため、破れていない水疱や膿疱の中にある内容液を採取して培養し、原因菌を突き止めることがあります。
発熱などの全身症状を併発しているようであれば、体内に急性の炎症がおきていないか確認するために血液検査や尿検査で腎臓への影響がないかを確認します。
とびひの治療方法
水疱性膿痂疹にはセフェム系抗生物質を内服します。
痂皮性膿痂疹にはペニシリン系かセフェム系の抗生物質を内服します。症状が重度の場合は点滴で全身投与を行います。糸球体腎炎を合併する可能性もあるため、尿検査を行います。とびひの症状が改善しても、糸球体腎炎を防ぐために少なくとも10日は抗菌薬を内服し続けなければならず治療も長引きます。外用薬には、抗生物質の軟膏を外用します。
また市販薬もありますが、自己判断せず、病院に行ってしっかり治療することが望ましいでしょう。
登園や登校はしていいの?プールは?
とびひは、夏に流行し、特に乳幼児がかかりやすいといわれています。夏は薄着なので肌の露出も多く、保育園や幼稚園など、子どもたちが集まる場所では感染力も高まります。
とびひはインフルエンザなどのように登園禁止ではありません。しかし、園によっては、登園を控えるようにという場合もありますので園に確認し、園の指示に従うようにしてください。
かゆみもおさまって、患部がかさぶたになり乾いてもガーゼで覆うなどして他の子と接触しないよう注意が必要です。
また、園やスイミングなどではとびひになるとプールに入ることができません。ですが、とびひはプールの水によって感染するということはありません。接触することにより感染するのです。しかしながら水の中では患部を覆っているガーゼがとれてしまうこともあります。何よりも感染した子と同じプールに入らせるのは心配ですよね。子どもはプールに入りたがるでしょうが感染防止のために控えるようにしましょう。
家庭での注意事項や予防は?お風呂は?
とびひになったら清潔を保つことがとても大切です。本人だけでなく他の家族も爪は短く切り、手洗いは徹底します。夏場の暑い時期に汗をたくさんかいて、皮膚が湿っているような状況は菌が繁殖しやすくなってしまいます。衣類は綿製で通気性の良いものが望ましく、汗をかいたら着替えたりシャワーを浴びたりしましょう。
またとびひには潜伏期間があります。症状があらわれていなくても他の人に菌を移してしまっていることもありますので注意が必要です。まだオムツをしている乳児が感染した場合は、おむつを定期的に取り替え、拭くときはゴシゴシとこすらずやさしく拭きましょう。保湿剤などで、肌を刺激から守ってあげるといいですよ。
お風呂は、湯船に浸かるのは控えてシャワー浴にしましょう。石鹸を泡立ててやさしく洗います。患部がしっかり乾いたら外用薬を塗ってください。絆創膏は通気性が悪いためガーゼが望ましいです。さらにガーゼで患部を覆っていても、衣類や寝具などはこまめに洗ってください。タオルや寝具は家族と共有せずに、とびひの人が使用した後には洗濯しましょう。
大人が感染するとどうなるの?
大人のとびひは痂皮性膿痂疹
大人の場合は、水疱性膿痂疹は少なく、免疫力の低下などが原因で痂皮性膿痂疹に感染することがほとんどです。重症化することも多く、強い炎症や痛み、発熱やのどの痛みなど全身に症状があらわれます。中には全身が真っ赤になってしまうケースもあります。特にアトピー性皮膚炎の方がとびひを合併症として発症すると急速に悪化してしまうので注意が必要です。全身が真っ赤になり、発熱やリンパ節の腫れ、咽頭痛だけでなく、稀に腎障害も併発することがあります。
妊婦
妊娠中は免疫力が低下しています。感染した場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。早期の治療が大切です。また心配なのは薬が及ぼす胎児への影響ですが、外用薬による胎児への影響は極めて低いとされています。また内服薬も妊娠中でも安全に使える抗菌薬がありますので安心してください。
高齢者
高齢者は皮膚が薄く、少しの衝撃でも傷がつきやすいのが特徴です。これは皮膚のバリア機能が低下しているためで、乳幼児がかかりやすい水疱性膿痂疹にも感染する場合があります。
皮膚科や小児科を受診して早期に治療を開始しよう
とびひは全身色々な場所にできます。お子さんが痒そうにしている、搔きむしっている場合には注意して観察し、膿んでただれたらとびひの可能性もありますので早めに皮膚科や小児科を受診するようにしましょう。